政府が管理監視下に置きにくい支払い手段

ビットコインのノード

ビットコインのノードをしばらく前から稼働させています。あわせて、ビットコイン上での高速な支払い手段を提供するLightning networkのノードも稼働させました。

ノードを動かすことは、 ビットコイン自体を持つということとは全く意味が違います。 ノードとは、ビットコインの送金をしたり、取引が正当なものかを検証する役割のプログラムのことです。日本円で例えると、銀行を営業することがノードを稼働させることに近い感じです。

このビットコインのノードは、銀行とは違い、金融庁から許可を得たりすることなく誰でも自由に動かしたり止めたりすることができます。そして、ビットコインを持っている必要もありません。

ビットコインの透明性と匿名性

ビットコインは、全ての取引が全世界に公開されています。よくある誤解として、ビットコインには匿名性があるということが言われます。しかし実は、ビットコインの取引は全て台帳に記録され、まるごと全世界に公開されています。口座の残高も厳密にわかります。過去にさかのぼってあらゆる取引が見ることができ、例えば一番最初の取引というのも見ることができます。見るだけならビットコインを持っているいないは関係なく、ビットコインなど触ったことのない人でも見られます。例えば以下のウェブページは、誰かが誰かに2009年に10BTC(ビットコイン)を送ったことを示すものです。

blockchain explorer output
Satoshi Sent 10bitcoin to Hal
https://www.blockchain.com/ja/btc/tx/f4184fc596403b9d638783cf57adfe4c75c605f6356fbc91338530e9831e9e16

ただし、ビットコインの台帳には、銀行口座と違って口座持ち主の情報が全く含まれていません。この取引が誰によるものなのか、この口座が誰のものかは、ビットコイン取引の台帳の情報だけからはわかりません。このことから、ビットコインには 擬匿名性があると言われたりします。

ところが、「私の口座は1Q21という記号のものだから、ここに10BTC振り込んでね。」とメールを送っていたとか、あるいは送金操作の記録がPCに残っていたなど、ビットコイン台帳の外の情報と組み合わせると、いつ誰が誰宛にどのくらいの量送金したかが明らかになってしまうことも多いです。

実際上記の例で言うと、ビットコインの生みの親である 通称Satoshiという人からHal Finneyという大御所(故人)に宛てて送ったものであることがメール等の情報から明らかになっています。

ビットコインを追跡する理由

上で述べたように透明性があるといっても、ビットコインを取引所で売り買いしたり、ビットコインの財布に入れて持っているだけでは、ビットコインの世界でどのような取引を行われているのかはわかりません。この透明性を利用してビットコインの追跡を行う効率的な手段のひとつが、ノードを稼働させることです。銀行の勘定システムには、顧客の日本円の取引が全て見えているのと同じです。

ではなぜビットコインの取引を追跡しようとしているのでしょう。それは、マネーロンダリングとの関係にあります。

警察庁が毎年公表している「 犯罪収益移転防止に関する年次報告書 」によれば、平成30年には仮想通貨取引所経由でマネーロンダリングが疑われた取引が7000件もあったとのことです。決済手段として最も普及している銀行を別格とすれば、保険業界で3000件も行かず、貸金業界で12000件ですから、仮想通貨の一般への浸透具合と比較して考えれば大きい数字に思えます。

ビットコインは政府が運営するものではなく、それどころか特定の運営主体が存在せず、稼働しているノード群の合意(コンセンサス)で運営されています。そして、住所氏名を明らかにしないと銀行口座を開けないのと対照的に、ビットコインの場合は財布(ウォレット)のソフトウェアアプリケーションをインストールすれば、誰でもすぐに送金受け取りができてしまいます。

  • 国際送金は現状では事務手続きが複雑で長い日数を要するが、この手間を省きたい。
  • 銀行や政府など、通貨を管理する側によって正当な送金を拒否・凍結されるような事態を避けたい。
  • 正当な権利としてプライバシーを守りたい。
  • 取引内容を(善意あるいは悪意をもって)秘密にしたい。

といった要求には、ビットコインはかなり適合するのです。 銀行はどこの国でも政府の厳重な管理下にあり、その取引はすべて政府に筒抜けで、時に口座の凍結などの権限が発動されることもあり得るのと比較して下さい。

現金やハサミが使いようで社会貢献にも犯罪にも応用されるのと同様、ビットコインも使いようです。ビットコインがこれから一般に浸透していくのであれば、その浸透具合に合わせた監視はあるべきことと考えます。

当団体のノード

こうした動向を把握すべく、ホワイトバードではビットコインのフルノードを2018年の夏ごろから継続して稼働させています。世界中では現在約1万のノードが稼働していて、うち日本で稼働しているものは数百と考えられます。(クラウドで動かすこともあるので、位置や国は厳密に調べることはできません)

wbird.jp's Bitcoin node location map
wbird.jp’s Bitcoin Node Location
https://bitnodes.earn.com/

さらに2018年秋からwbird.jpというLightningノードを稼働させています。Lightningはビットコインの少額決済を高速で行う技術です。ビットコインを単純に決済に使うと分単位の時間がかかってしまいますが、Lightningでは商店レジで使えるぐらいの高速決済を目指しています。まだ日本では数十のノードしか稼働していないようですが、Lightningを用いた支払いは今年から大きな広がりを見せています。一般の店舗で見かけるにはまだ時間がかかる見通しですが、従来の決済手段に不満や不都合を見つけている層の人にとっては注目の技術のはずです。Lightningは匿名性を一段高める副次的な作用もあります。

ビットコインやLightningの匿名性に関しては、送金過程の解析手段も進化しており、必ずしも利用者が匿名性を得られる状況ではなくなってきています。善意の利用者にとってもプライバシーなどの問題をはらむ状態にあります。この種の技術の常として、いたちごっこが続くことでしょう。その意味でも、この方面の技術動向には着目していきます。